夢見るコアラの日常

日本の政治と経済について勉強中。色々考察していく

一律給付金の再給付をすべきではない理由

2度目の一律給付金?

一律給付金の再給付を巡ってSNS上で騒動が起きている。

「#二回目の現金給付を求めます」、「#再度の現金給付を求めます」といったタグが次々と出てきてはトレンド入り。しかし、麻生財務相の「再給付をするつもりはない」という発言に対し多くの怒りの声が挙がっている。

www.fnn.jp

この件について最初に個人的な見解を述べる。

正直、お金を貰えるのは嬉しい。しかしそれでも、一律給付金の再給付は「すべきではない」と考えている。その理由を3つ述べる。

理由①: 一律給付金がもたらす経済効果は薄い

そもそも一律給付金の再給付を求める殆どが「生活が苦しい」という理由からである。確かに生活困窮者が続出し、日本経済に大打撃をもたらしているのであれば、国民全員へお金を配るのも効果的かもしれない。

しかし実態は異なる。昨年春の10万円給付における効果を検証した記事がこちらになるが、記事の中で一律給付金がもたらした消費押し上げ効果をこう分析している。

style.nikkei.com

内閣府は4月、総額12.8兆円の給付金のうち約55%が消費に回り、7.1兆円の経済効果を生むと試算しました。一方、第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストが6月までの政府統計から試算すると、消費の押し上げ効果は2割程度にとどまりました。三菱総合研究所が5000人を対象に給付金の使途を尋ねた調査でも、押し上げ効果は3割程度でした。

2人の専門家が消費押し上げ効果が2割~3割と分析している。すなわち国が配った12兆円ものお金のおよそ9兆円額が貯蓄に回されたことになる。当然、麻生財務大臣もこの結果を受け止めており、再給付はないと断言しているはずだ。

また、こちらの記事にも面白い記述がある。

www.jri.co.jp

一定の前提の下、緊急支援が必要だった人の総数は、643万人と試算される。就業者全体に占める割合では9.3%、国民全員に対する割合では5.1%にとどまっており、生活支援という意味では全員給付は過剰であったと言える。

つまり本当に支援が無いと生活ができないと感じている人は実に全体の一部に過ぎず、全国民へ10万円を給付する特段の理由はない。また当然ながら本当に生活が苦しい人へは10万円だけじゃ足りず、より手厚い支援が必要となるはずだ。

まとめると、全国民へ一律額の給付を行っても効果は薄く、より生活に苦しい人へ手厚い支援を行うべき、というのが私の見解である。政府も同じ考えであると信じている。

理由②:財源は大量の”借金”

SNS上でよく「税金は私たちが国へ預けているお金なのに何故返そうとしないのか」という怒りの声を見かける。そもそもの税金の在り方を理解していない点も見過ごし難いが、それ以上に財源について勘違いしている人が多い。一律給付金の財源は”税金”ではなく”国債”、即ち国の借金である。

news.yahoo.co.jp

昨年春の一律給付金ではのべ12兆円の財政支出が必要となり、その不足分は国債の増発により補われた。国民から徴収した税金は既に他の事に使用されており、それでもコロナ禍の経済対策として次々と国債が発行されている。日本の借金は膨らむばかりだ。

「現状、国債の大半を日本銀行が買い取っているのだから、国債をこのまま増発しても問題ないのではないか」という声もたまに聴く。経済については勉強中のためここでは詳細は割愛するが、色々調べてみても、専門家によって異なる見解が述べられており、現時点で明確な正解がない以上、政府が国債増発に躊躇するのも頷ける。今は日銀が国債購入額の上限を一時撤廃している状況だが、今後また上限が設定される可能性もあり、またデフレを脱却しインフレが加速化した際、国債の価値は下がり日銀を含め皆が国際を手放すことも想定される。その場合、国債の総額が多ければ多いほど、国民への影響も大きくなっていくかもしれない。

当然、日本経済が壊滅的状況とならないために対策を取る必要があるため、国債を財源とし予算を捻出すること自体は止むを得ない。しかし先ほども述べた通り、経済効果の薄い一律給付金の為に12兆円もの国債を追加発行することは現実的ではないだろう

理由③:人々の感染防止意識を削ぐ

年始に初めて緊急事態宣言の発令が現実味を帯びてきた時、「緊急事態宣言になったらまた給付金がもらえる!」という声をよく目にした。多分そこそこ生活にゆとりがあり、また緊急事態宣言になっても困らない人なのだろうが、そういった人達からしたら10万円の一律給付金はまさに「棚から牡丹餅」状態だろう。

これは個人的な見解だが、昨年春の10万円給付が、昨年秋から現在にかけての感染拡大を招いた1つの要因になっているのではないかと考えている。昨年秋、緩やかに陽性者が増えていく中、西村大臣は定期的に会見を開き、「緊急事態宣言を避けるよう頑張りましょう」と声をかけていた。しかしこの言葉に対しメディア含め多くの人が「いいから早く緊急事態宣言を出せ!」と、まるで緊急事態宣言発令を望んでいるかのような言いぐさだった。

緊急事態宣言は日本経済に大打撃を与える施策である。しかしそれを実感することがない人にとっては特に痛くも痒くもない。それどころか、もし国からタダでお金がもらえるとしたら、感染対策を頑張ろうという気が起きるわけがない。必死に政府が呼び掛けても彼らの心に響かないのは当然だと思える。所詮、コロナも日本経済も他人事なのだ。

もし再給付となれば、また同じことが繰り返されるはずだ。一旦感染が落ち着いても、他人事思考の人達は対策を怠り遊びまわり、また感染拡大を招いてしまう。そうならないためにも、「緊急事態宣言は感染抑制の一点の為だけに様々な物を犠牲にする」という事実を認識させなければならない。一律給付金の再給付が逆効果となる。

まとめ

一律給付金の再給付を反対する理由をまとめると、

①    財政支出額の割には経済効果が見込めない

②    国債増発により将来の日本経済へ影響を及ぼしかねない

③    コロナと日本経済について”他人事”と考える人が増出する

以上の3点である。

やはり本当に生活が苦しい人たちへ手厚い支援を行う方針が望ましい、と私は考えている。

「一律給付金がないと生活できない」という人たちは、まずは今手に持っているスマホSIMフリーに変えるか解約してからして、政府にお願いしたらどうだろうか?その方が現実的になるかもしれない。